お口の痛みは、歯医者さんで見てもらう虫歯や歯周病が原因のことも多いですが、なかには歯ではなく全身的な異常が原因となっていることもあります。
原因不明の痛みは不安になりますよね…。
お口の痛みの原因になることを説明していきます。
① 虫歯
② 歯周病
③ 歯の破折
④ 親知らず
⑤ くさび状欠損
⑥ 顎関節痛
⑦ 上顎洞炎
⑧ 三叉神経痛、帯状疱疹など
⑨ 心臓病(狭心症、心筋梗塞)
⑩ 非定型歯痛
こんなに、たくさんあるんです。
虫歯が原因で痛み
自分では虫歯はないと思っていても、歯と歯の間など見えない部分に虫歯があることもあります。
また、下の歯が痛いと思っていたが実は上の歯に虫歯があったということもよくあります。
虫歯が進行すると、根っこの病気となり、強い痛みが出ることもあります。その場合の治療は、抜髄(歯の神経を抜くこと)や根管治療という歯の根っこの治療になります。
冷たいものや甘いものでしみるようになり、次第に温かいものでも痛みがでるようになります。最後にはC4(神経が死んだ状態)になり痛みが軽減します。
歯の表面のエナメル質に穴があいた状態
痛みはありません
象牙質まで達した虫歯
冷たいもの、甘いものなどがしみ始めます
神経まで達した虫歯
炎症がおき、激痛をおこすこともあります
神経が死んだ状態
痛みは軽減してきますが、歯茎が腫れて炎症をおこす事があります
歯周病による痛み
・歯根露出による知覚過敏
歯周病によって歯の根っこが露出すると、象牙質が露出しやすい状況になります。
・歯石除去によっておこる知覚過敏
歯の根の表面を歯石が覆っている場合、象牙質に刺激が加わらないため知覚過敏の症状がでませんが、歯石を除去した時に象牙質が露出して知覚過敏の症状が出ることがあります。
・歯周病が進行し歯茎に膿がたまることによっておこる痛み
歯周ポケット内に膿が溜まり、その膿の出口がない時に、歯茎の腫れとして発現します。
歯の違和感や痛み、歯のぐらつきなどの症状が出てきますが、ひどい時には顔が腫れることもあります。
→歯周病の治療を適切に行いましょう。
「歯石が付いてる時は痛くないなら、歯石つけとけ」
なんて、考えはやめて下さいね。
どんどん歯周病が進行して歯が抜けてしまいます。
プラークコントロールがしっかりして、歯肉の炎症が改善した状態で歯石を取れば、痛みが続くことはあまりありません。
歯の破折による歯の痛み
虫歯でなくても歯が割れることがあります。肉眼では確認しにくいヒビが歯にあると、一見歯には問題ないように見えても痛みがでます。
破折の原因 力が強い場合
①歯ぎしり・くいしばりがある
(詳しくは、歯ぎしりのページをご覧下さい)
②スポーツなどでかみしめることが多い
③かみ合わせで強く当たる所がある
(歯医者さんで入れた補綴物が高い、歯並びが悪く特定の歯に力がかかる 等)
④歯の外傷
(転倒、けんか、スポーツによるものなど)
⑤硬い食物をかむのが好き
(豆、氷、あめ、うめぼしのたねなど)
破折の原因 歯の問題
①虫歯の治療後、歯の残っている量が少ない場合
②神経治療後にメタルコア(金属の土台)をいれている場合
患者さんには「メタルコアは歯に釘を打っているようなものだ」と説明しますが、自費治療の場合には、ファイバーコアなど弾力性のあるものを使用できます。
→神経の処置をして治ることもありますが、割れた状態によっては抜歯する必要があります。
親知らずによるお口の痛み
まっすぐ生えるのなら問題はないのですが、生える場所がない場合、少し頭を出してただけでとまったり、埋まったままになってしまったりします。
特に少しだけ頭を出している場合、虫歯にもなりやすく、汚れが溜まりやすいため、歯茎の腫れなどの炎症を起こすことがあります。ひどい場合には口が開けられないほどの痛みになることもあります。
過労やストレス、病気などにより免疫力が低下したときに痛みやすいです。
埋まったままの親知らずも、手前の第二大臼歯を押して、咬み合わせが変わることによって痛みがでることもあります。
特に下の親知らずで痛みが出ることが多いです。
→ワンタフトなどの小さい歯ブラシで丁寧に磨いていれば、虫歯や炎症を起こして痛みがででることは少なくはなります。
しかし、虫歯が進行したり炎症をくりかえしたりすると親知らずは抜き難くなるため、まっすぐ生える可能性のない親知らずはなるべく早めにぬくほうがいいと思います。
右のイラストのように、削れてしまっていることをくさび状欠損と言います。
歯の表面の硬いエナメル質が削れた場合や、象牙質という歯の内側の部分が露出した状態です。
冷たいものや甘いものを食べた時、歯磨きの時などにキーンと、知覚過敏の痛みが出ることがあります。
くさび状欠損の原因
①歯の磨き方に問題がある
硬い歯ブラシを使用、ブラッシング圧が強すぎる、研磨剤の入った歯磨き粉をたくさんつけて磨いていると歯ブラシで歯が削れていきます!!
(予防法)
適切な歯ブラシ、歯磨き粉を使用しましょう。電動歯ブラシを使用の際は歯磨き粉を使用しないで下さい。
知覚過敏用歯磨き粉シュミテクトは、硝酸カリウムイオン配合で歯の表面をイオンコーティングしてくれますが、研磨剤(清掃剤と表記されています)が入っているのでブラッシング圧の強いかたは使用しない方がいいと思います。
ブラッシング圧が強すぎる方は、なるべく鉛筆を持つように歯ブラシを握る(ペングリップ)といいです。
詳しくは知覚過敏予防のページへ
②歯ぎしり・食いしばりがある
歯をこすり合わせる歯ぎしりや、食いしばりによって、歯にごく小さな傷ができて、それが次第に大きくなりエナメル質や象牙質が削れます。
歯並びが悪く、他の歯よりも力が強く当たってる場合にも知覚過敏の症状がでることがあります。
(予防法)
歯ぎしり、食いしばりはストレスと関係があると言われています。
習慣的に歯ぎしり、食いしばりがある場合には、まず意識して力を入れないようにしましょう。
無意識のうちにやってしまうと言う人は、歯医者さんでマウスピースを作ってもらうのもよいと思います。
詳しくは歯ぎしりのページへ
顎関節症の症状
①顎が痛い
顎関節が痛い時もあれば、頭痛、肩こりのような筋肉痛がおこることもあります。(側頭筋の筋肉痛で頭痛になります)
人によっては耳鳴りがしたり全身の疲労感にまでつながることもあるそうです。
②口を開ける時(閉める時)音がなる
音が鳴るだけで痛みがなければ治療は必要ないとされますが、わざと音を出すのはやめましょう。
③口を大きく開けられない、全く開けられない。
(閉じられないこともあります)
指が縦に3本入れば正常とされます。
顎関節症の原因・予防法
①歯ぎしり、くいしばり
歯ぎしりはストレスによるものであるという説が現在では主流になっています。ストレスを解消するために歯ぎしりをしていると考えられています。
→詳しくは歯ぎしりのページへ
②咬み合わせの問題
歯科治療後咬み合わせに高いところがある
咬み合わせが深い(出っ歯、臼歯を喪失してそのまま 等)
反対のかみ合わせ(顎の動く範囲が狭くなり顎関節症になることがあります)
→歯科治療後なら調整してもらいましょう。
臼歯がない場合には、入れ歯を作りましょう。また、長期入れ歯を使用していると人工歯の部分が削れてくるため調整が必要です。
歯並びの問題の場合は、マウスピースを使用して症状を改善させるか、矯正するしかありません。
③癖
いつも同じ側で食事している
(歯科治療中、歯が喪失し片側でしか食べられない など)
頬杖をつく、うつ伏せで寝る など
→なるべく左右均等に噛んで食べるようにしましょう。
頬杖やうつぶせ寝でも顎関節症でなければいいのですが、痛みがあるならなるべく癖は中止しましょう。
同じ状態でも、顎関節症になる人とならない人があります。
硬いものをたくさん食べただけでも、筋肉痛のような感じで顎関節症になることがあります。私はさきいかを食べ過ぎると耳の下あたりが筋肉痛になります。
痛みを感じたら、まず安静にすることです。咬まずに少し口をあけた状態でリラックスしていると痛みは治まってくるはずです。
あまりに痛みがひどい場合には顎関節部に炎症がある場合があるため、歯科医院で薬を処方してもらいましょう。
一般に蓄膿症ともいわれる副鼻腔炎ですが、副鼻腔のひとつ上顎洞は、上の奥歯と隣接しているので、上顎洞で炎症がおきると歯に問題がなくても痛みがでることがあります。
次の症状があれば上顎洞炎を疑って下さい
・鼻から黄色い鼻水が出る
・ジャンプをしたり、頭を上下したりすると痛み(頭痛)がある。
・頬の周辺をさわると痛む
・小鼻の横あたりを押すと気持ちいい所がある
・上の奥歯(上顎第2小臼歯・第1、2大臼歯あたり)が痛む
・噛むと痛む
また、歯に問題があって歯性の上顎洞炎になることもあります。
耳鼻科に行って治療を行いましょう。(歯性上顎洞炎の場合には歯科治療も必要です)
通常は左右どちらかにおこります。
口角、口唇、鼻翼、鼻唇溝、眉、歯肉などに冷刺激や接触刺激を受けると、疼痛が誘発されます。
つまり、洗顔やお化粧、食事や冷たい水を飲んだ時、歯磨きなどによって誘発されることもあります。
触ると痛みを誘発されるポイントがあります。
1回の発作は、5~20秒位長くとも2分以内でおさまります。発作が終れば、痛みはなく普通の状態にもどります。
→口腔外科、脳神経外科やペインクリニックで見てもらって下さい。初めはテグレトールという薬を服用することになることが多いです。
水ぼうそうを起こすウイルスと同じウイルスによって起こる病気です。
水ぼうそうは治ってもウイルスは体の中に残り、免疫力が低下したときにウイルスが活発になり、神経に沿って皮膚や神経を攻撃しながら増え始めます。
免疫力が低下する原因としては、過労やストレス、病気、免疫抑制薬の使用、高齢化などがあります。
症状は、皮膚にチクチクするような痛みが起こることから始まります。この時に顔周辺の神経でウイルスが増殖した場合、口の痛みを感じることがあります。
時間がたつと痛みを感じた場所に発疹ができ、水ぶくれとなって帯状に広がります。
この症状は、特に胸から背中、腹部などによくみられます。他には顔や手、足にも現れます。症状が現れるのは体の左右どちらか片側です。
→帯状疱疹かなと思ったら、すぐ皮膚科を受診しましょう。
皮膚症状が回復しても痛みだけが残り、いつまでも続く場合があります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。
三叉神経痛、帯状疱疹とも、神経何らかの理由によって刺激されたことによる痛みです。
このほかにも口の周りには様々な神経が通っており(顔面神経、舌咽神経など)痛みの原因になっていることがあります。
狭心症、心筋梗塞に関連したお口の痛み
心筋梗塞や狭心症などの心臓病で、放散痛(関連痛)と言って胸の痛み以外に、左側の腕、肩、首、顔面にも痛みを引き起こすことがあります。
左下の奥歯が痛くなることが多い。
特に狭心症の場合、歯のみ放散痛がおこりやすいそうです。
特徴
①激しい運動や興奮したときに左下の奥歯がズッキンズッキン痛む。
②胸、腕、首なども同時に痛む。
→当てはまる場合には、早めに医院を受診して下さい。
非定型歯痛
歯やそのほかにもまったく異常がないのに、慢性的に歯の痛みが起こる病気のことで、40~60代の女性に多くみられる病気です。
何らかのきっかけで不安やストレスなどの心因的なことが引き金となり、脳の痛みをコントロールするシステムに変調が起こることにより、歯やその周囲に痛みが現れます。
痛みではなく、咬み合わせがおかしいとかしっかり咬めないなどの症状のこともあります。
幻肢痛(あるはずのない手足が痛む症状)のように、脳のトラブルが痛みの症状として出ていると言われています。
特徴
・一日中痛むが、食事には支障がないこともある
・痛む場所が広がったり場所が変わったりする
・神経を抜く処置や抜歯をしても痛みがひかない
・歯科治療後から痛みが続いているが、歯には問題が見つからない
・鎮痛薬が効かない
脳の神経回路の問題なので、脳に起きた変調を調節する三環系抗うつ薬で、症状の緩和ができるといわれています。主にうつ病の治療で使用される薬ですが、慢性の痛みにも効果があり、非定型歯痛の治療でも使用されているそうです。
三環系抗うつ薬は医師でなければの処方できないため、心療内科への受診していただくことになります。
非定型歯痛では、「絶対に歯が痛い」と患者さんが訴え、歯の神経の処置をしたり抜歯、咬み合わせの調整などをすことで症状を悪化させる場合があります。